油冷エンジンってなに?
スズキが開発したバイクに搭載されていることで知られる油冷エンジンは、その名前の通り「油でエンジンを冷やす」仕組みのことです。
通常、エンジンと言えば空気で冷やす空冷と、水で冷やす水冷タイプが一般的ですが、こちらはエンジンオイルでエンジンを冷やそう、という非常に斬新な考えに基づいた仕組みになっているのが特徴です。
バイクや自動車では、燃料(ガソリンなど)を燃焼させることで動力を得る一方、どうしても熱が発生してしまいます。
それをなんとか冷やさないと、エンジンが過度に熱くなってオーバーヒートや故障などの原因になってしまうのです。
空気や水で冷やす仕組みはわかりやすいですが、油で冷やすというのかなかなかイメージがわきにくい面もあります。
この油冷エンジンでは、特殊なエンジンオイルがエンジン内の熱を吸収しながら循環し、ラジエーターに運ばれたところで熱が外部に放出される仕組みが採用されています。
そして熱を運んできたエンジンは、再びエンジン内部に戻るのです。
この繰り返しによってエンジンが冷やされ、過熱を防ぐことが可能になります。
じつは基本的な仕組みは水冷タイプと共通しており、熱を外に逃がすのに使用されるのが水か油かの違いとなっています。
油冷エンジンのメリット・デメリット
最大のメリットは、水冷タイプよりもエンジンをコンパクトにすることができる点です。
水冷タイプの場合、水を循環させるためのポンプやウォータージャケットが必要になります。
しかし油冷タイプの場合、エンジンオイルを冷却に使用するためもともとのエンジンオイルの循環システムを使用して冷却機能を発揮できるため、必要なパーツが水冷タイプに比べて少なく済むのです。
これはバイクのエンジンにとって非常に優れたメリットと言えます。
一方、デメリットは水冷タイプに比べて肝心の冷却効果が劣る点です。
やはりエンジンを冷やすためだけに冷却水を使用する仕組みに比べると、冷却の効果が落ちてしまいます。
そのため、自動車やハイパワーなエンジンでは冷却効果が間に合わない恐れがあるので油冷タイプは向いていないと考えられています。
油冷エンジンのバイクにはどんなものがある?
そもそも近年になって油冷エンジンに注目が集まるようになった背景には、スズキがこのタイプのエンジンを「復活」させたことがあります。
スズキはかつて開発した油冷エンジンを2000年代に入って一度廃止していたのですが、ここに来て再びこのタイプのエンジンを搭載したバイクが発売されているのです。
代表格ではジクサー250、SF250、Vストローム250SXなどが挙げられます。
つまり、現在のところスズキのバイクに限定されているような状況です。
復活した理由は、以前に比べて油冷エンジンの性能が向上したからなのでしょう。
そうなると、今後の技術の進歩でさらに油冷エンジンを搭載したバイクが増えていくことも予想されます。